デジモンゲームコミュニティ

【いろいろ知りたい デジモン関係者に聞く!】<>

【いろいろ知りたい デジモン関係者に聞く!】
 『デジモン』のことをより深く知ってもらうために、関係者からコンテンツの制作経緯や苦労話など、普段あまり聞けない話を訊き出します!

今回は「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」発売直前記念として、なんとあの『デジモンアドベンチャーVテイマー01』の誕生秘話を作者のやぶのてんや先生に、デジモンのデザイナー渡辺けんじ先生と『ハッカーズメモリー』プロデューサー羽生Pが直撃インタビューしました!


⇒第一回のインタビュー(キャラクターデザイン:渡辺けんじ氏)はコチラ
⇒第二回のインタビュー(玩具企画担当:WiZ前川氏)はコチラ
⇒第三回のインタビュー(ゲーム担当プロデューサー:三戸亮氏)はコチラ
⇒第四回のインタビュー(SPインタビュー:やぶのてんや先生&渡辺けんじ先生 前編)はコチラ

1999年から2003年にかけて、『Vジャンプ』で連載された『デジモンアドベンチャーVテイマー01』。
『デジモン』シリーズのマンガ作品としては、記念すべき1作目となる。本作は、デジタルワールドのフォルダ大陸を舞台に、八神太一とブイドラモンの交流や成長、活躍を描く。
この作品に太一のライバル、彩羽ネオのパートナーとして生み出された“アルカディモン”が、2017年12月14日発売の『デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー』に登場する。

作中で“究極体”をも超える“超究極体”へと進化し、太一とブイドラモンを追い詰めたアルカディモン。
この強敵はどのようにして生まれたのか。『デジモン』シリーズの生みの親の一人である渡辺けんじ氏を交えて、マンガを手掛けたやぶのてんや氏に、羽生和正プロデューサーが直撃した。

写真左・渡辺けんじ氏(文中は渡辺)
写真中央・やぶのてんや氏(文中はやぶの)
写真右・羽生和正プロデューサー(文中は羽生)

●テイマー同士のバトルを主軸にしたアニメとは異なるストーリー展開

羽生: ここからはストーリーについてお聞きしたいと思いますが、当時は『デジモン』の世界観があまり出来上がっていなかったと思います。

渡辺: プレイステーションで発売された『デジモンワールド』の設定は共有していましたが、逆に言うとある程度まとまったものは、それくらいしかなかったんじゃないかな。

羽生: そういった状況の中で、世界観はどのように膨らませていったのですか?

やぶの: 担当編集者さんや井沢さんと集まって、月に2、3回、打ち合わせを行っていました。ストーリーはそこで出たアイデアをもとに考えていきましたが、ビジュアルはゲームに登場するファイル島のイメージを膨らませていきました。当時若くて、引き出しがあまり大きくなかったのですが、そのなかから使えるネタを探して考えていったのを覚えています。

羽生: ストーリーはどのように考えられたのですか?

やぶの: 僕の好きな短編読切があって、こういうふうにしたいというのは井沢さんに伝えたような気がしますが、井沢さんがその方向で考えたのだと思います。井沢さんはゲームのシナリオを手掛けられてもいて、RPGは今以上に流行っていましたし。

羽生: たしかに、ゲームっぽいなという印象はありました。強い敵をどんどん倒しながら異世界を冒険していったり、旅の途中で人間のライバルの彩羽ネオが出てきて。

(↑太一のライバルとして登場した彩羽ネオ)

やぶの: そうですね。ゴマモンのエピソードは、窮地に陥った村を救うヒーローのような展開ですし、ヴァンデモンのエピソードは、閉じ込められた城からの生還を目指す、脱出ゲームのようにしようと打ち合わせを行いました。

羽生: ネオが登場したあたりから作品の雰囲気が変わりましたよね。人間のキャラクターがたくさん登場するようになって。

やぶの: 3巻のネオとの戦いで、最初に考えていたエアロブイドラモンに乗って空中戦を繰り広げるというひとつの山場をむかえました。連載がこのまま続けられることになり、次はどんな展開にしようかと考える中で、井沢さんがエイリアスⅢ(ネオの思想に賛同する3人のテイマー)のアイデアを考えてくださって。

(↑新たな人間のテイマーとして登場したエイリアスⅢ)

羽生: テレビアニメではデジモンと戦うという展開が続く中で、人間のテイマーたちとのバトルで展開する物語は新鮮でした。どのような意図で人間のキャラクターを増やしたのですか?

やぶの: テイマーバトルを発展させようと。もともと、マンガを連載するにあたって、液晶玩具の本質を押さえようと意識していました。デジモンに餌を上げたりお世話をしたりして育成する。そうして育てたデジモンをどう戦わせるのかというテイマーバトル。そういった本質から絶対ぶれないようにしたいと気をつけていたので、テイマーバトル発展の方向になったんだと思います。

羽生: そうして生み出したエピソードの中で、とくに印象的なものをお聞きしたいです。

やぶの: (しばらく考えてから)いちばん印象深いのは、3巻に収録されている22話の「Butter-Fly(バタフライ)」ですね。テレビアニメと違って退化しないので、ゼロマルをなかなか進化させられないなか、このエピソードでついに進化します。大きな見せ場になるので、いかにドラマやデザインをからめるか、頭を悩ませましたね。ただ太一にゴーグルをつけて空中戦を行うという、最初に考えていたアイデアが結実するシーンでもあったので、ここまで描ききれてよかったという気持ちのほうが強かったです。それと、アニメの主題歌「Butter-Fly」と絡めて成長する、進化する瞬間を意識して描いたのも思い出に残っています。気づいてくれた方がいるかもしれませんが、ゼロがシルエットになる瞬間、蝶のようにしています。

(↑ゴーグルをつけた太一とエアロブイドラモインとの空中戦)

(↑ゼロマルのエアロブイドラモンへの進化シーン)

羽生: (マンガを読み返しながら)たしかに蝶のシルエットになっていますね! 気づかなかったなぁ。

やぶの: 進化するときの演出も重要だということで、アルカディモンも、究極体のデザインは進化シーンがドクロに見えるように触手の位置をデザインしています。超究極体に進化する瞬間もそうですね。

(↑胸のシルエットがドクロになっているアルカディモンの進化シーン)

羽生: すみません、そこも気づきませんでした……。

やぶの: 進化シーンにはこだわったので、アルカディモンがゲームの中で進化するとき、どういう演出になっているのか気になっていたのに(笑)。

羽生: 進化するときの演出は、デジモンごとに変わらないですね……。必殺技などの動きは意識していたのですが、そうか進化の演出かぁ……。

渡辺: あらぁちょっと、読み込みが足りないんじゃないですか?(笑)。

やぶの: (笑)。でも進化シーンのこだわりは長年言えなかったことなので、この機会に公表できてよかったです。

羽生: 味方のデジモンの進化はどうしても共通した演出をシステマチックに使用する仕組みになっていたので難しいかもしれませんが、ストーリーで絡めるとか、特定の条件を満たすと特別な演出が見れるといったことは、今後の作品で考えても面白いかもしれません!今後の参考にさせていただきます。お話しを戻しますが、22話でゼロマルの進化シーンを描いたということで、すでに2年近く連載されているんですよね?

やぶの: 今にして思うと、よくここまで我慢したなと(笑)。

羽生: テレビアニメだとすぐ進化しますからね(笑)。ちなみに、最初から2年くらい連載することが決まっていたのですか?

やぶの: 明確な連載期間は、決まっていませんでした。

渡辺: 当時はテレビアニメがいつからいつまで放送するかも、我々は分かりませんでしたからね。もちろん、マンガが急に終わることはないと思いますが。

やぶの: でも、テレビアニメが人気になって、『デジモン』は安泰だなというのを見て、ネオっていうテイマーを出していますし、これはゆっくりイケると思っての22話だったと思います。

羽生: そうして連載が続くわけですが、エイリアスⅢのヒデトがオメガモンを連れているのは驚きました。ある意味で『デジモン』を象徴するオメガモンが、マンガには敵として出てくるんだって。

(↑ヒデトのパートナーデジモン、太一達の敵として登場したオメガモン)

やぶの: ヒデトは善と悪のはざまで揺れるキャラクターなので、オメガモンのテイマーに相応しいというところから選ばれました。

渡辺: これは覚えていますよ。オメガモンを敵として出していいですかって聞かれたのを。それで「どうぞどうぞ」と。ヒデトは完全悪ではなく、意味があっての悪でしたし、ゼロマルに対してそれぐらい対等なキャラクターがいないとダメだよねという話しをしました。

羽生: やぶのさんのお話しにもありましたが、それこそマンガを知らない若い世代のファンにとっては、オメガモンと太一が戦うのは衝撃の展開ですよね。『デジモンアドベンチャーVテイマー01』を未読の『デジモン』ファンの方は、この機会に電子書籍版を読んだほうがいいですよ!

やぶの: 宣伝してくれてありがとうございます(笑)。そうしていただけると、僕としては本当にうれしいです。

渡辺: テイマーという言葉を使い始めたのも、この作品が初じゃないかな。『デジモンワールド』のときは、主人公のことをテイマーと言ってないよね?

羽生: 『デジモンワールド』では言ってないですが、1998年にセガサターンで発売された『デジタルモンスターVer.S ~デジモンテイマーズ~』に登場します。時期的には、マンガの連載スタートとほぼ同時期ですが、テイマーに決まった経緯は覚えていますか?

やぶの: おそらく『週刊少年ジャンプ』の記事を作っていた方が、テイマーという言葉を使っていたんじゃないかなぁ。ただ、テイマーは調教師のような、主従関係が強い言葉なので、最初は少しだけ躊躇しましたが、かっこいいというか、オリジナルっぽい言葉ですぐに気に入りました。

羽生: 『デジモンアドベンチャーVテイマー01』というタイトルは、やぶのさんが考えたのですか?

やぶの: タイトルは井沢さんと考えました。

渡辺: でも、いずれにしてもテイマーの言葉を確立したのはやぶのさんのマンガだと思いますよ。『デジモンテイマーズ』の監督は、作品名をマンガから取りましたと言っていたよね?

やぶの: そうですね。そう言ってくれました。

羽生: マンガの連載が続く中で、次々と新しい『デジモン』のアニメが始まるのは、何か思うところはありましたか?

やぶの: うーん、僕は初期の設定にこだわって動かさないタイプで、ここに液晶玩具の『デジモン』としての原点はあるので、安心感というか、揺るがないというのはあったと思います。

渡辺: 僕らからすると羨ましかったですよ。テレビアニメは1年で変わるので、その度に設定を考えるのは、正直大変でした(苦笑)。新しいギミックを入れようとしても、ほかのコンテンツとかぶってきちゃうんですよね。最初に考えた設定でずっと続けられるのはいいよなって。

やぶの: ノビノビと描くことができた、『Vジャンプ』の環境もよかったと思います。

羽生: やぶのさんと編集部の相性がよかったんですね。ちなみに、描いていてとくに楽しかったデジモンはいますか?

やぶの: デジモンと言うか、ゼロマルがオメガモンにやられて羽が串刺しになったところを、ガーボ(ガブモン)とイガモンが必死に助けようとするエピソードが好きですね。このコンビはキャラクターというか、デジモンとして好きでした。

(↑ガーボとイガモンが共に力を合わせゼロマルを助けようと勇気を振り絞るシーン)

羽生: ガーボは最初から太一たちに同行しているとして、そういえばイガモンもちょくちょく登場していました。やぶのさんのお気に入りだったからなんですね(笑)。

やぶの: イガモンは、役どころとして、動かしやすいポジションにスッとハマったのはありますね。

渡辺: 太一たちといっしょに冒険するデジモンに、ガブモンを選んだのには何か理由があったの?

やぶの: ガブモンは初期のデジモンの中で、毛皮を着ていてキャラクターが立っていたので。それに見た目も可愛いですからね。

羽生: たしかに(笑)。あと、連載するうえで苦労したエピソードなどがありましたらお聞きしたいです。

やぶの: 強いて挙げるなら、デジヴァイス01というアイテムをマンガにも出すことになったときですかね。当時の副編集長に「デジタル感が足りないね」とダメ出しされました。 なにかデジタル感のあるアイテムを、と言われて。そのとき、〆切せまる中、できてたネームを全ボツにして、井沢さんと担当さんと三人で喫茶店をはしごしながら、丸一日ず〜っと話し合いました。短い時間とページの中いろいろつめ込まなければならなくなって、ハードルはかなり高かったのですが、太一とゼロワンが共闘している感じがさらに増すなど、後々のストーリーに生かされたのでよかったです。

(↑デジヴァイス01の初登場シーン)

●超究極体“アルカディモン”がデジモンゲームの最新作に降臨!

羽生: いよいよ、『デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー』に登場する、アルカディモンについてお聞きしたいと思います! アルカディモンはかなり重要な役どころですが、初期から考えられていたのですか?

やぶの: そうですね。アルカディモンの“超究極体”という設定は、渡辺さんたちは最初戸惑ったと思いますが、公式で最も強いとされる“究極体”の上を作って、太一やゼロマルが“超究極体”とどう戦うんだろうというのを描きたいと考えていました。ネオが出てきた時点で、アルカディモンという名前にしましたが、ネオは理想郷(アルカディア)を追い求めているというところから、それを具現するデジモンとして生まれました。


(↑超究極体へと進化を遂げたアルカディモンの姿)

羽生: 超究極体は、アルカディモンが初だと思いますが、この設定を考えたのは?

やぶの: 井沢さんですね。先ほど井沢さんはゲームのような世界観を考えるのが得意だったとお話ししましたが、真のラスボスをどうするか考えるなかで、超究極体を倒すストーリーにされたんだと思います。

渡辺: 超究極体を作ってもいいですかと聞かれて、より強いデジモンの表現としてそれはいいですよと答えましたが、公式の設定の上では究極体までしかないので、そのなかでも特に強いデジモンが超究極体という扱いになっています。

羽生: アルカディモンはデザインも独特ですが、設定と合わせて最初に考えたのですか?

やぶの: いえ、アルカディモンを“超究極体”に徐々に進化させていくというタイムリミットのサスペンスは最初に考えましたが、どういうデザインにしようかは、登場させるときに幼年期からその都度考えていきました。

渡辺: やぶのさんが描かれるデジモンは独特なデザインが多いよね。幼年期とか、どうしてこうなったんだろうって。僕には描けないので、純粋にすごいなと思います。

やぶの: 幼年期は、ヌルっとした気持ち悪さと、甲殻類のイメージをミックスして。この2つの要素をベースにして、成長した姿もデザインしています。

羽生: アルカディモンの超究極体は、クラゲのようなイメージにも見えますが……。

やぶの: まさにクラゲなんです。超究極体のデザインはギリギリまで悩みました。最初はアルフォースブイドラモンのように、人型でカッコイイタイプにしようかなと考えていましたが、テレビを見ているときにエチゼンクラゲのニュースがやっていて。そのとき「これだ!」と。それで、人型のデザインと、カメの甲羅のようなゴツゴツした体からクラゲのようなたくさんの触手がでているデザインのラフ画を2つ描いて提案したところ「どちらもいいですね」と言われて。それならくっつけちゃいますかということで、アルカディモンの超究極体のデザインが決まりました。

渡辺: 敵のデジモンは、くっつけて生み出すことが多いよね。

羽生: 超究極体のアルカディモンのような、シンプルだけど不気味なデザインの巨大な敵が迫ってくるのは、かなり怖いと思うんですよ。僕が今回、アルカディモンをゲームに登場させたいと考えたのは、超究極体のデザインがすごくかっこよかったのと、それが現実世界に現れて、建物などの比較対象のある場所で見たときの怖さを表現したかったんです。

やぶの: 実際にゲームで動くところを見させてもらいましたが、すごくよかったです。

羽生: 巨大なデジモンが街中に出現したときの恐怖感は、デジモンならではの醍醐味だと思いますが、そういう意味でもアルカディモンの魅力をうまく出せているかなと自負はしていましたが、やぶのさんにそう言っていただけるとさらに自信が持てました(笑)。

やぶの: あと、アルカディモンに関しては、読み返すたびに、原作の井沢さん、さすがだなと思うんです。アルカディモンとアルフォースブイドラモンはストーリー上、対をなすようになっているんですよ。アルカディモンは、ドットマトリックスという01を分解する必殺技を使ってくるのですが、一方のアルフォースブイドラモンは、アルフォースという01を再生する力を使うという。ブイドラモンはもともと古代種で短命という設定なのですが、それを感情の起伏によるオーバーライト(01の書き換え)により短命なのだという理由にした上で、テイマーとの絆でそれを克服してアルフォース(再生)という力を手に入れることになるんです。そうして「分解」と「再生」の2つの力が物語後半の核になっていく…。井沢さん、さすがです。


(↑聖なるオーバーライドにより再生したアルフォースブイドラモン)

渡辺: こちらもいい刺激になりますよね。マンガがずっと連載されて、キャラクターが動いていると。こういうふうに表現してくれるんだと楽しみながら読んでいました。みんな手弁当というか、手作りだったんですね。そもそも当時は、メディアミックス展開がほとんど確立されていなかった時代でしたから。お互いの作品の相乗効果でよくなっていくのは、僕としてはとても楽しかったです。

羽生: そういう設定がうまく生かされているのは、マンガならではのよさですよね。ならではと言うと、パラレルモンもやぶのさんがデザインされていますよね?

やぶの: はい。

羽生: いつかパラレルモンもゲームに登場させたいんですよ。また、カリスモンなどもベアモン系統のグリズモンの進化形として登場させたいなとも思っていたりします。

やぶの: 機会があれば(笑)。

羽生: ぜひ!それでは最後に、ファンの方にメッセージをお願いします!

やぶの: アルカディモンをゲームにフィーチャーしていただき、とてもうれしいです。見せていただいたゲームの映像も、再現率が非常に高くて開発スタッフの方たちの強いこだわりを感じました。ファンの方にもぜひ見てもらいたいと思います。アルカディモンは、『デジモンアドベンチャーVテイマー01』のテーマにガッツリとリンクしていますので、ゲームをプレイしたり、インタビューを読んだりして興味を持ってくれた方は、ぜひマンガもよろしくお願いします!!


↑やぶの先生からの応援ボード!ありがとうございます。

やぶのてんや先生の『デジモンアドベンチャーVテイマー01』全9巻
デジモンファンは見逃せない名作です!電子書籍で販売中!!
是非この機会にチェックしてみてください↓↓↓

「Vテイマー 電子書籍」で検索!!

TOPへ戻る